INTERVIEW|Philipp Haffmans
INTERVIEW
Philipp Haffmans
「根底に流れるミニマリズム。スタイルとエンジニアリングの完璧な調和」
The PARKSIDE ROOMでも1st Collectionから魅了され、展開してきたアイウェアブランド、〈Haffmans & Neumeister〉。道具としての機能性とファッション的な観点から見た魅力。その両方を内包しながらも、一貫して洗練された印象の本ブランドにはアイウェアという制限のあるプロダクトの中に新たな表現の余地を感じさせてくれるような魅力が詰まっている。今回はそんな〈Haffmans & Neumeister〉の創設者でありデザイナーの一人でもある、Philipp Haffmans氏のパーソナルな部分にフォーカスし、Q&A形式にてインタビューを行った。
About Haffmans & Neumeister
【ic! Berlin】【MYKITA】の創設者であるフィリップ・ハフマンス /Philipp Haffmans 、ダニエル・ハフマンス/Daniel Haffmansの兄弟と、アート業界にもその名が知られているジャン=ピエール・ノイマイスター Jean-Pierre Neumeister の3人が共同して新たにスタートしたブランド。オリジナルで開発されたスクリューレスのヒンジ、ステンレスのシート素材などで構成された彼らのプロダクトは、ヴィンテージ・アイウェアのシルエットをステンレスのシートメタルから切り取り、折り曲げ、膨らまし、クラシカルなフォルムを再構築したコレクションに仕上がっています。
・Haffmans & Neumeisterにとって最も重要なことは?
〈Haffmans & Neumeister 〉(以下〈H&N〉)に身を置く1クリエイターの”自分にとって”最も大切なことで言えば、過去25年以上の間辿ってきた「プロダクトの進化」をブランドの顧客にも認めてもらえているところ。〈Ic! Berlin〉,〈Mykita〉,そして現在の〈H&N〉と、コンティニュエも私達と共に歩んで来てくれたけど、そうやって私達の作るプロダクトが進化してきたこと、そしてそれを認めてくれる、支持してくれる人達がいるということ自体が自分にとっても作ってきたプロダクトにとっても名誉なことだと思っているんだ。また、視点を変えて〈H&N〉のアイウェアが最も貢献してきた点を挙げるとすれば「ミニマリズムの境界線、可能性を押し広げることに成功してきたこと」だろうね。
・ではHaffmans & Neumeister”らしさ”とは何でしょう?
私たちのコレクションにはスタイル(外見)とエンジニアリング(製造方法)という完璧に調和しなければいけない2つの側面がある。エンジニアリングにおいてはミニマリズムという概念を形作るような働きがあって、日本では”侘び寂び”と呼ぶのかな。本質的に必要なもの以外は全て削ぎ落としていくんだ。そして、そこには剥出しの姿だけが残る。その剥出しの様が美しく感じるし、全てのコレクションの根底にあって、常に追い求めているものだね。そしてその土台が整ったら、スタイルを決める作業が始まる。プロダクトのシェイプに合わせてそれぞれ完璧なラインを描いていく。スクエアやパントゥ、ラウンド…とね。そして次に線の太さやサイズ、最後にカラーを決めていくんだ。その全ての工程において一貫した美意識が流れていること、また、デザインと製造技術(方法)が完璧なバランスで成立することによって〈H&N〉らしさは作られているように思う。
・Philippのアイウェアデザインにおいて最も影響を与えた事柄やデザインがあれば教えてください。
私が最も影響を受けたのは主にクラシックなフレームで、特に好きな年代は1900年代。それと1820年代に作られたフレームの大ファンでもある。その時代のフレームの信じられないほど美しいディテールをいつも楽しんで見ているよ。本当に素晴らしいんだ。
・アイウェア以外のジャンルについて聞いてみたいんだけど、影響を受けているデザイナーや好きなデザインなどありますか。
私には一貫してミニマリズムが流れていて、明瞭なコンセプトとコンパクトにまとまったデザインに惹かれ易い。車のデザインにおいて言えば「VW GOLF 1 series」や「FIAT PANDA」を手掛けたジョルジェット・ジウジアーロの作品は好きで、他には「CITROEN’s 2CV」のクリエイター、フラミニオ・ベルトーニもそうだね。2017年に電気自動車として「BMW I3」とともに再登場したおよそ80年も前の(1936年当時の)製造技術に憧れや敬意の念を抱いているし、日本だと同クラスのル・マン・チャレンジで勝ち取った、800ccエンジンを搭載した名車、「HONDA S800」も素晴らしいエンジニアリングとデザインだよね。建築の分野では”ミッドセンチュリー”が特に好きで。あと、ブラジルの建築家で、未来都市ブラジリアを手掛けたオスカー・ニーマイヤーのファンでもある。
・今回別注したエクスクルーシブモデル2型はどんな印象?
モデル、FULLERは極細のステンレスにミニマルな佇まいで柔らかなスクエアシェイプ。特にサイジングに”ヴィンテージ”のニュアンスを感じる。実際、20世紀初頭は今日のフレームよりも小さめで作られていて。そんなサイズ感がクラシックな雰囲気を醸し出しているし、それでいてアセテートの控えめな表現が完璧に調和していると思う。リミテッドカラー、「”Minuit – ミニュイ”= 真夜中」の極めて濃いダークネイビーは室内ではほとんど黒に見えるんだけど、日光に照らされるとその青みがかった独特な色合いが浮かんでくる。そういった掛けるシーンによって表情を変えるような奥行きの感じられるカラーリングが魅力的で、クールだね。
mod.Fuller col.424 [Continuer Exclusive]
Shadowは極めて細いラインで描かれたラウンドシェイプのダブルブリッジ。元々ダブルブリッジは1910~1920年頃に強度を保つ目的で作られたディテールで、そういった部分にもヴィンテージからの影響があると言えるかな。このモデルの特徴でもある美しい真円はグラフィカルで、顔の柔らかいラインとは対照的。クールなモデルだよね。今回のエクスクルーシブモデルはラインの繊細さとステンレスの質感は一見ミニマルな印象だけど、程良く華やかな印象のシャンパンゴールドを合わせることでミニマリスティックなスタイルに更なる余地を感じさせるような配色が素敵なバランスに仕上がってると思う。
mod.Shadow col.033 [Exclusive]
・日本や東京のカルチャー、またそこに住む人達のイメージについて聞かせてください。
日本のカルチャーについて:私が何か創作する時は日本をいつもロールモデルにしているよ。日本を旅行すればどこへ行っても美意識を感じるし、自分のフォルダはインスピレーションの源のような写真で溢れている。日本では建築や日常的に使う道具、ガーデニング、橋の掛け方にさえインスピレーションを感じる。ちょうど最近手がけているプロジェクトは姫路城で見た木組にインスパイアされてるんだ。
東京に住む人達について:いつもそこに暮らす人達のコントラストに感銘を受けている。働き終わった後も同僚と夕食に行ってお互いを労いあっているイメージかな。それといつも思うのは、東京は人が多くて密集しているにも関わらずみんな決まって礼儀正しい。あとはそうだね、順応性や協調性を感じるんだけど、対照的に、とあるファッションストアでのパーティーでは、驚くほどガーリーな衣装から野生のモンスターのような格好まで、誰もが熱狂的ににコスプレやドレスアップしていて。その二面性が「Tokyo Vibe」を端的に表しているなって思う。
・好きな日本食はありますか? また、日本に来た際のお気に入りスポットは?
日本には魚料理が素晴らしいレストランや料亭があるよね。不思議な見た目をしていた、”ギガンティック”な貝も味は美味しかったし、魚の頭そのものを出されたのはとても刺激的だった! そんな料理、他のどの国でも見たことが無くて、いつも何か新たな発見がある所も日本を好きな理由の一つでもあるね。アパートでひっそりと営業している隠れ家的なバーや地下にあるバースツール6つだけの小さなレストランに行くのも好きだよ。
・最後に改めて、あなたにとって良いデザインとは?
クリーン、シンプル、機能的。
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